ひろば183号 たかが脂肪肝、されど脂肪肝

私たちが、日常摂取した食物は腸から吸収され、門脈という肝臓に特有の血管で、肝臓に送られて、体に必要な成分につくりかえられます。肝臓は合成、貯蔵、解毒などどんな大きなコンビナートにも勝る機能を持っています。

腸から送られてきた糖や脂肪は肝細胞の中に中性脂肪として蓄えられ、必要に応じて全身に送り出されて、エネルギーとして使われます。過剰に摂取した栄養物は肝臓では脂肪肝として貯えられ、また、皮下や腹膜の脂肪細胞に蓄積され、肥満状態となります。脂肪肝であっても特に症状はありませんから、多くは、検診で肝機能検査を機に発見されます。



脂肪肝の肝機能

肝機能のALT(GPT)値の正常は30以下とされていますが、本当に健康な人では20以下です。ですから、特に病気がない場合、20を超したところから、さらに、詳しい検査(超音波、CT、糖代謝検査)を受けた方がいいでしょう。



アルコールや肥満

大酒(毎日、日本酒3合以上)を続けると、やがて、アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変まで進み、飲み続けると不幸な結果になります。ところが、アルコールをとらないのに、お酒のみと同じような肝臓の変化がある状態が肥満のヒトで見つかり、これを非アルコール性脂肪性肝炎(NASH= Non- Alcoholic Steato Hepatitis・ナッシュ)とよびます。NASHは進行性で、肝硬変症さらに肝がんまで進行することが注目されています。

NASHの患者さんをみると、肥満のほかに、往々、糖尿病や血糖値が高い状態であることがわかってきました。糖尿病は一般には、膵臓から分泌されるインスリンが不足した状態をいいますが、NASHや、NASHにまで至らない肝機能異常を持った広い概念の非アルコール性脂肪性肝疾患の患者さんはインスリン値が高い状態にあることが認められ、これをインスリン抵抗性と呼んでいます。インスリン抵抗性は生活習慣病=メタボリック症候群と同義語です。このような患者さんを治療する時のキーワードになっています。



脂肪肝の治療

脂肪肝の治療には、インスリン抵抗性を解消する対策として肥満を解消させることになります。肥満の解消といってもなかなか努力が続かないのが現実です。そう、努力というと、まじめな患者さんほど頑張るのですが、頑張ると疲れて、いつの間にか、姿が見えなくなります。どのようにして日常生活の中で体重を減らしたらいいでしょうか。

今、私が患者さんにお勧めしている、脱脂肪肝対策です。

  • 毎日、起きたら体重計に乗り、前日よりも増えていないか、減っていないかをチェック=体重に関心を持つ。
  • 体重の動きを指標にその日の食事量を考える。
  • 食事は米飯を中心にして、その日の体重成績に従い、ご飯を加減する。
  • 規則的な生活ー太陽の動きに合わせる。体内時計を狂わせない。早寝、早起きをする。。
  • 持続可能な運動ー毎日屋内での仕事量を増やす。片付け、掃除などを男性も協力する。女性は間食を避ける。様々なスポーツの動きをまねする。ボクシング、相撲、サッカー、野球のいろいろな動作等々、普段動かさない筋肉をのばす。短時間でいいから、何回も続ける。屋外に出られないという理由で運動しないのは駄目。続けることが大切。


時には、治療にインスリン抵抗性改善剤を使います。


図:肥満の解消と薬物治療(アクトス)の奏功した例

脂肪肝


約13年間で当初の体重より5%減らし、肝機能も正常化、糖の指標になるグリコアルブミンも正常域になりました。この間、インスリン抵抗性の指標(HOMA-IR)も、解消しています。




2013/9/15発行

医師 相川達也

目で見る病気 門脈圧亢進症

肝硬変やその他の肝臓病や血管の疾患により門脈血の流れが悪くなり、門脈の圧が上昇する事を「門脈圧亢進症」と言います。また、原因疾患がないのに門脈の圧が上昇する事があります。 これを「特発性門脈圧亢進症」と言います。

門脈圧亢進症のCT画像での特徴は脾腫、門脈径拡張、側副血行路の発達が挙げられます。3D画像が簡単に作れるようになったことで血管の走行や臓器の位置関係をより分かりやすく観察する事ができます。

CTで特徴的な門脈圧亢進症の画像を紹介します。


門脈および門脈構成血管の拡張

門脈は脾臓、胃、腸管から肝臓へ向かう血管で構成されています。門脈とその構成血管の拡張した画像です。


pht3拡張した門脈および門脈構成血管



側副血行路

圧を受けて肝臓内に流入できない血液をどうにかして心臓にもどそうと、脇道が発達します。通常では観察できない血管が太くなり、血液の逃げ道になります。直接、腎静脈に流入する珍しいタイプもあります。食道静脈瘤は側副血行路の代表的な一つです。その他有名なものに「メデューサの頭」と呼ばれるものがあります。


pht1^澳Ь静脈→⊃道静脈瘤


pht2^澳Ь静脈→半奇静脈・奇静脈→食道静脈瘤→心臓


pht4^澳Ь静脈→下大静脈→心臓


pht5∞静脈→大網静脈→下腸間膜静脈→下大静脈


pht6同上


pht7∞静脈→∝腎静脈吻合→腎静脈→げ実臉徒


pht8〆弧臾枝→∨窮狙徒・臍静脈→J∧廟徒(メデューサの頭)




2013/9/15発行

放射線技師

ひろば183号 慢性心不全の日常管理 ー入退院を繰り返さないためにー

日本の死因順位をみますと、第一位は悪性新生物(癌など)で第二位は心疾患です。心疾患には当然心不全も入ります。殆どの心疾患の終末的病態が心不全だからです。また心不全は心疾患だけでなく、肺疾患・高血圧・主要臓器の老化によっても発症します。高齢化に伴い、慢性心不全は増加しつつあります。慢性心不全の症状については、ひろば(180号)で述べましたが、今回は慢性心不全にならないように、あるいは悪くならないようにするのに必要な日常生活管理について述べたいと思います。慢性心不全で入院された方の一年以内の再入院率は日本では40%、米国(コロンビア大学)で70%という統計があります。そして、再入院の原因は医学的なものより、自己管理の不徹底によるものの方が多いとのことです。


それでは再入院する方と入院せずに生活を維持されている方との違いは何なのでしょうか。それには、先ず慢性心不全と言う病気を理解することだと思います。慢性心不全は前述いたしましたように全ての心疾患の末期ですから完治する事はなく、確実に徐々に進行していきます。ですから、息切れ・むくみなどの症状が改善し、退院となっても病気が治ったわけではないのです。日常生活を上手にコントロールしなければ入退院を繰り返してそれこそ人生の終末です。入院なさって、点滴など加療を受け改善してもそれは薬物だけの力ではありません。


入院中の安静・塩分制限した食餌・規則正しい生活など統べてが影響し合って改善するのです。しつこいようですが治癒したわけではなく、退院後はこれらをご自分であるいはご家族と共に管理していかなければ、心臓は再び耐えられなくなり急性増悪の形をとるわけです。それでは自己管理はどのようにすれば良いのでしょうか。列挙してみます。



一、水分と塩分の制限

利尿剤といって尿を出す薬を飲むことが多いのですが塩分過多ですと、体内水分貯留は防げません。塩分は一日6〜7gくらいが適量と言われています。水分量は個々人異なります。むくんでいない時の体重を目安にして、朝晩毎日体重を測定して下さい。2坩幣綢僚鼎増えたら危険信号です。心不全が悪くなった可能性があります。


二、禁酒・禁煙

アルコール性心筋症と言う病気もあるくらい、アルコールで心臓は障害されます。禁煙は当然です。


三、運動の制限

当然息切れするような運動はいけません。息切れは心臓が悲鳴をあげているのです。重いものを持ったり、急坂・階段も出来るだけ避けたいのですが、無理なときにはゆっくり休み休みあがって下さい。


四、過労を避ける

仕事をなさっている方は特に注意です。仕事を辞める方・減らせる方は良いのですが、やむを得ず続けられる方も多いと思います。その方は特に日常管理が必要です。精神的・身体的に落ち着いた生活が理想なのですが。無理しないように。


五、服薬をきちんとする

服薬を中断したり、いい加減な飲み方により再入院される方も多いです。心臓の薬は飲み方を間違えると少量でも副作用がでたり、効果がない事もありますので処方通りに内服してください。


六、その他

風邪を引くと心不全は増悪しますので早めに受診を。時に鎮痛解熱剤はむくみや肺のうっ血の原因となりますので、やたら服用しない方が良いです。急激な温度差も良くないし、熱いお風呂に首までつかって、長湯するのも良くありません。

慢性心不全の状態になってしまった患者さんは、一生治癒することはなく、むしろ加齢と共に悪くなる傾向が強いのですから、これらのことを注意なさって、よりよい生活を送っていただきたいと思います。




2013/9/15発行

医師 相川礼子

生活習慣病と肝疾患

社会構造の視点からの考察

1 肝疾患の増加

健康診断をすると約3割の方に肝機能障害が見つかります。殆どが脂肪肝(肝臓の細胞内に過剰に脂肪が蓄積した状態)であり、主な原因は体重増加と過剰な脂肪の摂取です。今回は生活習慣が元で生じる肝臓病についての話題です。但し、読者の方々が目にする機会も多い話題ですので、少し切り口を変えてみたいと思います。日本の社会構造の変化を概観して、如何に日本人が運動不足になってきたのかをまず検証します。次に回を変えて食生活の変化も解説したいと思います。

心不全

心不全という言葉は、皆さんお聞きになったことがあると思います。心不全というのは、簡単に言いますと、「症状を伴う心室機能障害」と定義されます。今の医学でも難治性疾患で、心不全の原因あるいはその程度にも因りますが、心不全症状を起こした方の約5割は5年以内に亡くなっておられます。しかも、高齢化に伴い有病者数は急増しています。この怖い心不全について解説致します。

目で見る病気19 肝臓の硬さを見る〜エラストグラフィ〜

ウイルス性肝炎などの慢性肝疾患が進行すると肝臓の組織に線維化が起こり、硬くなってきます。この硬さの程度を測定することができれば、慢性肝障害の進行の程度を知ることが出来るのですが、現在、肝臓の硬さを測定する標準的な検査方法は、肝に針を刺して肝組織を採取して調べる肝生検という検査方法です。しかし、患者さんに侵襲性のある検査で、繰り返して検査を行うことはできませんでした。

慢性肝疾患と血小板

血小板数でわかること

1 門脈圧亢進症と脾機能亢進症

門脈は胃や腸からの血液を肝臓に運ぶ血管です。その圧力は5〜10mmHgです。心臓から全身に血液を運ぶための動脈の圧(いわゆる血圧)は70〜120mmHg ですから、かなり低いことが分かります。門脈圧亢進症とはこの門脈の圧が高くなることです。門脈圧亢進症をきたす主な疾患は肝硬変、特発性門脈圧亢進症、肝外門脈閉塞症、Budd-Chiari症候群の4つで、このうち肝硬変が80%を占めます。肝臓が硬くなると血液が流れ込みにくくなるため、門脈の圧が高くなるのです。門脈圧亢進症になると様々な症状が現れます。腹水と食道静脈瘤が主なものです。肝硬変の患者さん全員に腹水や食道静脈瘤が発症するわけではありませんが、腹水や食道静脈瘤があると門脈圧亢進症があると判断します。

さて、門脈圧亢進症にはもう一つ重要な症状があります。それは脾機能亢進症です。脾臓からの血液も門脈を通って肝臓に入るため、門脈圧亢進症になると脾臓にも負担がかかります。そのため脾臓が腫れ、その機能が強すぎる状態となり、亢進症と呼ばれます。脾臓の機能の一つは寿命を迎えた白血球、赤血球、血小板を破壊することですから脾機能亢進症ではこれらの血球が過剰に壊され、血液中の血球が減少します。特に血小板の低下が臨床的に問題となります。

咀嚼を考える

食物連鎖の頂点にたっているヒトは原始生命体から今日まで、延々と生命活動のエネルギーを外部の世界から採り入れて進化してきたのです。今、成長し、生殖し、活発な日常生活の活動源として当然のように食物をとっていますが、これを支えているのが消化活動です。

眼で見る病気18 椎体圧迫骨折

圧迫骨折とは

 必要以上に強い外力が加わったとき、その圧力で骨が折れてしまう症状のことを「圧迫骨折」といいます。骨粗鬆症により骨が弱くなり、脊柱の椎体が圧迫骨折してしまうことが多くあります。特に第11胸椎、第12胸椎、第1腰椎、第2腰椎などに圧迫骨折が多くみられます。


圧迫骨折の症状

 腰椎圧迫骨折の症状としては、主に「腰の痛み」や「背中の痛み」が挙げられます。これらの痛みは、体を動かした際、背骨の骨折部分に負担がかかるために生じます。その外にも、神経が骨折により圧迫されると痺れを伴うこともあります。しかし、症状が全く起こらないこともあり、腰椎圧迫骨折の症状にはかなり個人差があります。


圧迫骨折の原因

腰椎圧迫骨折の原因は、若者の場合は転落事故、スポーツ中の事故等が主で、高齢者になると骨粗鬆症の影響を一番多く受けます。


圧迫骨折の治療

腰椎圧迫骨折では基本的には、他の骨折と同様、足の痺れなどの神経症状がなければ保存療法の治療が有効ですが、保存療法中は安静にするためにどうしても運動不足になってしまい、背中や肩のこりなどの痛みを伴う場合もあります。脊髄神経に近い椎体の後側が折れて神経を圧迫したりして下肢麻痺を起こすと、手術が必要になることもあります。


圧迫骨折の予防

骨粗鬆症と圧迫骨折を予防する最良の方法は、バランスのとれたカルシウムとビタミンDが豊富な食事、定期的な運動、及び、アルコールや喫煙の過度の使用を避ける事を含む健康的なライフスタイルをとることです。


圧迫骨折


2012/1/15発行

放射線技師

ヘリコバクターピロリ菌と血小板数

慢性肝炎に対するインターフェロン治療が開始してから、約20年が経過しました。治療が上手くいった患者さん、残念ながら完治には至らなかった患者さん、さまざまだと思います。なぜ、同じお薬による治療を受けたにも関わらず、成功・不成功の差が生じるのでしょうか?


1番の理由は、ウィルス量の問題です。そして2番目の理由は、ウィルスのタイプです。同じC型肝炎であっても、インターフェロンが効きやすいタイプのウィルスと、手強いタイプのウィルスとに分類されます。でも、同じタイプのウィルスで、しかも同じぐらいのウィルスの量なのに、患者さんによって治療の成果には差が出てしまいます。個人差だと言えばそれまでですが、科学的になにか理由はないのでしょうか?

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