在来食を見直す 昭和前半「ぴんぴんころり」の食事

日本の食事が長寿の食事と世界の注目を集めて久しい中、実際の日本の食卓は日本食とは言えず、国際色豊かな食事になっています。今後日本人の平均余命は短くなっていくだろうと予想されている中、最後まで健康でいられる食事を、近代の日本食の変化と共に考えてみたいと思います。

日本は農耕民族です。農業を営みながらの生活では食事の変化はさほどなく、戦中戦後の食糧難以外の高度経済成長期前まではご飯に豆・豆製品、野菜の煮物、漬け物、みそ汁というように、食事の容積の半分をご飯が占め、半分がおかずでした。現代のような肉・卵・魚が毎食のように食卓にのぼる事はありませんでした。

昭和30年代、産業の発展と分業化が進み、農業も生活から離れてゆきました。さらに産業が加速した現代、昼夜問わず操業する仕事も多くなり、生活リズムが乱れ、仕事自体が健康的な生活への大きな障壁となることがあります。栄養指導をしていて多く見受けられるのは、朝食を食べず午前中に間食をする、晩酌による夕食の菓子化、休日の外食・インスタント化です。


飽食時代の現代は、調理・片付けをする手間をかけずに、買って食べるだけの食事が金銭で買える時代です。外食や中食は購買意欲が湧くよう食欲に忠実であり、高タンパク・高脂質、あるいはひどく糖質に偏っています。それでも、味・見た目良く仕上がって簡便に摂れる食事に人は満足し、それを毎日の食卓にも求めるようになりました。冷凍技術も進歩し、驚く程おいしい料理を家庭で簡単に食べられるようになり一層豊かに思える食事ですが、これらの過剰な利用は簡便さや時間の余裕を得るために、健康を代償にしています。なぜなら、栄養の偏りの他にも、分業され生産者の顔の見えない食材は、薬の使用や流通経路のわからない偽装、様々な理由で添加物が加えられ、安全性の問題を多くはらんでいるからです。今後はTPP(環太平洋パートナーシップ)により、さらに多くの不透明な食品が出回る事になります。


話が逸れましたが、在来の食事が現在では変化し、野菜・豆類の摂取が肉・卵の摂取に入れ替わり、魅力あふれるおかずの増加は、ごはんの摂取量を減らしてしまいました。米消費量の減少と期を同じくして大きく減ったものは食物繊維です。しかし、精白米のご飯と食パンは食品成分表で比較すると、100kcalあたりでも100gあたりでも、含まれる食物繊維量は食パンの方が微量に上回っています。ということは、在来食を多く取り入れるといっても、パンからご飯にするのでは意義は薄く、麦や玄米をいれてご飯を炊く、豆や野菜を補充する事も工夫されるべきでしょう。

また、多様化した生活習慣で、一日二食が習慣化していると、一日の熱量を満たせず、栄養素も不十分です。それを間食や晩酌で熱量だけ満たしているのでは、健康を害する可能性があります。可能性の話であれば良いですが、脂肪肝や境界型糖尿病のように「半健康」の状態で、自分の体を軽視して生活習慣を変えないのは決して良い事とは思えません。


三食をリズムよく、均等に食べる事。ご自分の満足できる仕事やライフワークの実現は体の機能が保たれてこそできるのだと思います。最後まで生活の質を良好に保つため、今一度食事を見直してはいかがですか。




2013/9/15発行

管理栄養士

少しでも多く口から食べてもらいたい

当院の3階にある厨房は朝から夜まで賑やかです。包丁の音、水の音、お皿の音、機械の音。「たくさん食べてもらえるように」と、日々食材を相手に奮闘しています。


誰でも自分の作った料理の評価は気になります。厨房の方達は、食器洗浄の際、誰がどれくらい残したか覚えており、全く面識のない患者さんでも、残食が多いと病状を心配して、私に尋ねてくることもあります。入院患者さんによっては、食欲不振が続き低栄養(食事からのエネルギー摂取不足により、体を作るべき栄養素がエネルギーに使われてしまう状態)になり、体力不足で治療も進まない「負の循環」に陥ります。厨房では、患者さんがそうならないよう、患者さんの状態によって硬い食材を抜いて調理したり、嗜好に合った個別メニューを作ることも行っています。

戦前・戦後の食事・食卓の変化

食にまつわる「コショク」という言葉には変換が複数あります。「孤食」一人で食事をする。「個食」同じ食卓を囲んでいても別々の物を食べる。「固食」嗜好に合った決まったものしか食べない食事。「小食」「粉食」など。どれも現代の食事の問題を表した漢字変換です。「コショク」は子供だけでなく、独居高齢者や独身者にも存在し、それによる食生活のゆがみは生活習慣病の一因になっているといっても過言ではありません。


大正期、食卓は箱膳を主としており、箱に入っている自分の食器・箸は大切に扱っていました。世界を見ても自分専用のテーブルウェアがある国は少ないのです。箱膳は囲炉裏を囲んで暖を取りながら食事をしていた当時の環境に適していました。食事内容は穀類と野菜・魚がいつもの食事で、特別な食事に肉・牛乳が登場する程度でした。


大正〜昭和30年代、照明や暖房器具に石油や電気が使われ始めたため、卓袱台を囲んだ食卓になります。しかし、食事は団欒の場ではありませんでした。

昭和40年代になり、生活の洋風化と共にダイニングテーブルで食事を囲むようになりました。厳しい作法は緩み、積極的な会話で団欒を楽しむようになります。次第に生活が豊かになり食卓が多様化し、TVに気を取られてしまう、孤食などの現象が現れたのはこの頃からです。


食事のマナーや作法は食卓を囲んで自然と学ぶものです。それは家族のコミュニケーションツールでもあり、個人の価値観や美意識などの形成に関わります。他人の目を気にしない振る舞いや、逆に過剰に羞恥し人目につかない場所で食事をするなど、食卓を囲まない孤食は、栄養の偏りや偏食の助長以外にも、社会のルールや常識を崩壊させると言われています。


孤食が増えた理由は核家族化、共働き、一世帯当たりの子供の数の減少、塾通い等、家族内でライフスタイルが多様化したことに因ります。飽食の現代、いつでも食事が手に入りマナーや作法の身に付かない環境は「もったいない」という感覚を生まず、食べ残しや食品の廃棄を助長させました。また、飽食によるカロリーオーバーで肥満となった体に、更に金銭を投じて痩せようとするのは全く皮肉なことです。


低温で保存期間を延ばしていた昭和40年代と異なり、加工技術や添加物で保存期間の延長ができる現在です。一人当たりの食品添加物摂取量が年間平均4圓畔垢い討匹思うでしょうか。野菜の摂取量の減少が抑えられないというのに、化学肥料や農薬の使用、環境汚染などで微生物が減少し、土壌がやせ、野菜に含まれる栄養も低下しているのです。


まず、今から始められる事。小手先であったとしても、食事はただ食べれば良いのではなく、たまには手作りの食事で会話のある食卓を囲んだ楽しい記憶を作り、食事に感謝することが自分の意識の変化を生み、ゆっくりと後世に伝える必要な事なのではないでしょうか。




2011/9/15発行

栄養士

スナック菓子中毒?

スナック菓子はついつい手が伸びますよね。と栄養士らしからぬ言葉ですが、このスナック菓子に依存性があるのを意識した事はありますか?子供はもとより、成人でもスナック菓子に依存する傾向があり、今や疾病の一因となっている可能性があるのです。


スナック菓子が止まらなくなる原因の一つは、スナック菓子に含まれるうまみ調味料です。原材料の欄には「アミノ酸」や「たんぱく加水分解物」などと記載されています。一般名は「グルタミン酸ナトリウム」「イノシン酸ナトリウム」「グアニル酸ナトリウム」です。


うまみ調味料は1960年代に微生物を用いる製法が開発され、安く大量に製造できるようになり、広く使用されるようになりました。当時は化学調味料と呼ばれていました(現在もこの呼称を使用する事があります)。1980年代のグルメブームで一時は負のイメージのあった化学調味料ですが、うまみ調味料と呼称を変え、現在ほとんどの加工食品に含まれているといっても過言ではありません。


さて、近年30年は飽食の時代と言われています。飽食の時代に生まれ、飢餓を知らない世代が親となり、出産・養育期を迎えています。うまみ調味料入りの食品で育ってきた親が、自然の旨味だけでおいしいと思える食事を作れるはずがありません。添加された濃い旨味は日本人の味覚を鈍化させています。自然の旨味は繊細で、添加された旨味に慣れた人にとっては物足りなさを感じるのです。また、スナック菓子には保存料としてリン酸塩が添加されています。リン酸塩は亜鉛の吸収を阻害するので、スナック菓子を多く食べていると亜鉛不足から味覚障害になる可能性もあるのです。


また、現代はストレス社会とも言われます。ストレスにより交感神経が亢進した状態では、グリコーゲンが分解され血糖が低下し空腹感を感じます。そんな時に手軽に間食できる食品として、スナック菓子は現代のニーズに合っているのです。


子供の場合、教育現場で食育が行われています。食育においておやつの時間は食事の一部と位置づけられ、内容もおにぎりや果物など食事同様に構成されます。おやつの時間はお菓子の時間ではないのです。対して成人では食育に触れる機会がありません。自分で意識しないとその頻度に気付かず、堆積して健康の害になることがあるのです。一度、口に入れるすべての食品を見直してみてください。




2011/3/15発行

栄養室

糖尿病患者の食事 2

最近マスコミで取り上げられることが多くなったGI(glycemic index)値。血糖の上昇を抑制する事が、細小血管障害の防止に効果があることから、糖質による血糖値の上昇が緩やかな食品を選択するツールとして話題になっています。GIとはグルコース50gの血糖上昇曲線を100として、その食品の血糖上昇を指数化したものです(表)。


表 GI値
食物の種類GI値
パン(白)69
米(玄米)66
米(精白米)72
スパゲッティ50
トウモロコシ59
コーンフレーク80
オートミール49
じゃがいも(粉末)80
じゃがいも(新)70
さつまいも48
いんげん29
だいず15
りんご39
バナナ62
オレンジ40
干しぶどう64
果糖20
グルコース100
マルトース109
ショ糖59
アイスクリーム69
牛乳34
ヨーグルト36

しかし、GI値が低くても食べ過ぎて肥満を招いては意味がありません。逆に高GI値でも一回量や頻度が少なければ大丈夫ということになります。そして、旬の果物の味が濃いことからもわかるように、季節により同じ食品でもGI値に差があります。また、例えば同じうどんでも、煮る時間が長くなるにしたがってGI値は高くなるという調理法の違いもあります。ですから、数値の高低はあまり気にせず、食物繊維の多い野菜、海藻、きのこを一緒に食べる献立の方が毎日の血糖上昇抑制効果として取り組みやすいと思います。


糖質ばかりに意識が行ってしまう人の誤りとして多いのが、主食を食べない食習慣です。確かに主食は食後の血糖を上げますが、重要なエネルギー源です。エネルギー不足はエネルギーを燃焼しにくい体質を作り、たんぱく質をエネルギー源として代用するため筋骨の減少をもたらします。タンパク質は脂質と結びついていることが多く、おかずのみの食事は体脂肪を増やす原因にもなりかねません。


減量に意識が行ってしまう人の誤りとして多いのは、欠食と糖質に偏った食事です。減量や、忙しいなどの理由から朝食欠食あるいは食パンのみ、昼はおにぎり1個などの簡素な食生活で薬に頼った糖尿病治療をしている人もいます。たしかに、肥満ではインスリン抵抗性が増しますが、そのために糖質に偏った食事をしていては何の治療をしているのか分かりません。


そして、細小血管障害による合併症のリスクを下げるために、血糖コントロールだけではなく高血圧、脂質異常が起こらないようにすることも重要です。そのために、減塩をしたり、コレステロールや飽和脂肪酸を多く含む食品を控えたり、食物繊維を多く摂ることも必要になります。


糖尿病治療は食事療法単独で行うことはなく、運動療法さらには薬物療法と併用されます。しかし、食事による血糖コントロールは細小血管症の発症、進展を有意に抑制することは証明されており、健康で長生きするための食事と捉え、周囲の人も巻き込んだ食事の改善をしていくことが食事療法を長続きさせる秘訣です。




2009/5/15発行

栄養士

糖尿病患者の食事 1

糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの作用不足により起こる慢性の高血糖を主徴とする疾患で、飽食時代の現在のおいて患者数は右肩上がりに増加しています。糖尿病の治療には食事、運動、薬物の3つの療法があります。食事療法はどのような治療をしている人でも必ず行わなければならない治療法です


糖尿病の食事は第一に適正な体重を保ちながら、日常生活に必要な分だけ食事をして余分に食べないことです。第二に体に必要な栄養素(炭水化物、タンパク質、ミネラル、食物繊維)を過不足なく食事で摂るということです。食品についていえば、食べていけないものはほとんどありませんし、糖尿病に特によい食品もありません。毎食の食事に意識を向け、いろいろな食品を食べることで、バランスは自然ととれて行きます。


簡単にいろいろな食品を食べると言っても、食事が偏っていることに気がつかない人もいます。ご自分の日常良く食べる食品を振り返ってみてください。「糖尿病患者のための食品交換表」という本では食品を6つのグループに分けて、適正量を写真で分かりやすく掲載しています。


  1. 穀物、いも、とうもろこし、れんこんなど炭水化物の多い野菜、豆類(大豆を除く)
  2. 果物
  3. 魚介、肉、卵、大豆・大豆製品、チーズ
  4. 牛乳、乳製品(チーズを除く)
  5. 油脂、マヨネーズなど油脂性食品、ベーコン・落花生など脂質高含有食品
  6. 野菜、海藻、きのこ、こんにゃく

1、2は炭水化物を多く含み、3、4はタンパク質を、5は脂質を多く含みます。調味料はその他として別枠に捉え、アルコール、果物缶、干し果物、ジャム、菓子パン、菓子、清涼飲料は糖尿病には好ましくない食品と位置づけられています。毎日各グループをまんべんなく食べられていますか?何か思い当たる点は見つかりましたか?


食環境を見ると、もっと気づくことがあるかもしれません。一人で食事をする生活で食事時間が短く血糖が急上昇しやすい、逆に大勢・外食が主で食事時間がだらだらと長く糖質の吸収が長時間になってしまうという時間の問題。食事が大皿盛りだと、自分が全部でどれだけ食べるかわからない、野菜は食卓にたくさん並んでいるのに実際はそれほど食べていないなどの問題も隠れており、食事を分析しただけでは分からないこともあります。


食事は本人の食行動を改善させなければならず、初めはストレスを感じる事もあります。また、ストレスの割には結果が見えにくいことから、薬の方が安易で、食事療法になかなか取り組めない方、諦めてしまう方も見受けられます。「習慣の改善はまず一週間から」と自分を勇気づけ、行動を改善していくうちにやがてその行動が新たな習慣となって備わっていくのだと思います。




2009/3/15発行

栄養士

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