ひろば181号 フクシマ原発事故での甲状腺ガン問題

今年2月13日に、福島県民健康管理調査検討委員会が、0歳から18才まで若年者を対象に実施した甲状腺ガンの検診結果を発表しました。それによると、3名の甲状腺ガンが発見され、すでに手術は済んでいること、その他に7名が組織検査で甲状腺ガンとされています。福島医大、石川、鈴木の二人の教授は記者会見で、多発していることは認めましたが、因果関係については原発事故以前に発症したもので、事故との関連を否定しました。

これに対して、岡山大学医学部環境生命科学研究科の津田敏秀教授は、統計学を専門とする立場から、福島医大の2教授の説明に疑問を投げかけています。今回の検診で見つかった甲状腺ガンは、手術を受けた3名であっても、検査が済んだ7名の患者数でみても、統計的に有意に高く、この地区で甲状腺ガンが多発していると結論できる。この事実は、二人の教授も認めているとおりだとされています。しかし、二人の教授はチェルノブイリ事故でも、4年が過ぎてから甲状腺ガンは発見されているのだから、事故後早期に見つかった甲状腺ガンは、事故とは関係なく、事故以前からあったものだと、説明しているが、それならば多発の原因は事故以前から放射能汚染があったことも、原因仮説に入れなければならない。事故との因果関係を何とか否定したい二人の教授の論法では、皮肉にも、さらに広い範囲の調査が必要となることでしょう。福島県が、石川教授に学長のポストをあたえてまで、県民を被害から守ろうとするのに、なぜか、調査を早める気配はなく、真剣に対応する姿勢がないのは科学的でもありません。


チェルノブイリ事故では4年から甲状腺ガンが出たという論拠も、石川教授が報告している資料を分析すると、確かに4年目は多発が明瞭になりますが、すでにその3年前から多発の傾向が見られることを指摘されています。チェルノブイリ事故が起きた1986年と現代では医療機器も進歩し、甲状腺ガンの検出能力も格段に差があるのですから、事故後4年ということに固執するのは科学的でありません。岡山大津田教授は最後に「残念ながら、鈴木教授や石川教授のご経歴を拝見したりご説明をうかがったりしていますと、このような医学データを収集・分析・更新しながらの判断は、ご専門ではないようです。このように事態がゆっくりとはいえ進行するような状況下では、因果関係があるとかないとかという大ざっぱな水掛け論はあまり意味がありません。そこで議論の進展がストップしてしまうからです。むしろ、この多発の動向に関して定量的な解析を繰り返し、情報を更新しながら現実的な対策を合意して形成していくのが建設的で様々な事態に対応できるのではないかと思われます。そのためには随時情報を公開し、住民の協力を得るための信頼関係構築への努力が不可欠であると思われます。」と結ばれています。


われわれも原発事故時にヨウド剤を注文したら、納品不能と言われたことを思い出します。というのは今月号のThe DaysにNHK、ETV9の取材記録があり、各地へ納品を差し止めていたことが書かれていました。2年たってもヨウド剤の配布法が決まったような、決まらないような。災害時の国民の生命が危機にさらされていても、真剣にとりくむ姿勢がありません。


お上は、庶民の不安を広げないように、心を砕いているのだとのジェスチャーだろうが、大きなお世話です。官が情報を公開し、広く意見を聞く姿勢がないのは、また、大事故を招く恐れがあります。


*引用文献:福島県での甲状腺がん検診の結果に関する考察 ver.3.02

http://www.kinyobi.co.jp/blog/?p=3551

岡山大学医学部環境生命科学研究科 津田敏秀教授

*参考:国連「健康に対する権利」特別報告者アナンド・グローバー氏・日本への調査 ( 2012年11月15日から26日) に関する調査報告書(2013年5月23日暫定版仮訳)

http://hrn.or.jp/activity/srag.pdf


2013/5/15発行

相川達也

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