咀嚼を考える

食物連鎖の頂点にたっているヒトは原始生命体から今日まで、延々と生命活動のエネルギーを外部の世界から採り入れて進化してきたのです。今、成長し、生殖し、活発な日常生活の活動源として当然のように食物をとっていますが、これを支えているのが消化活動です。

消化の始まりは調理です。食物を切り刻んだり、熱を通したり、発酵させたりして、口に入りやすいようにします。そして口に入ってきた食物を、舌と歯でさらに噛み砕き、唾液の中の消化酵素が混ざりやすくする一連の働きを咀嚼と言います。咀嚼=噛むことで、大脳を刺激し、さらに唾液の分泌を進め、胃腸の働きを呼び覚まします。


ヒトは歯がまだ、生えそろわないうちは、咀嚼行動はあまり盛んではありませんが、やがて、積極的にいろいろな食物を噛んで食べるようになり、顎が発達し、唾液も盛んに分泌します。この時、過保護で何時までも離乳食に近い柔らかな食物をとり続けると、子供は口当たりのよいものを選ぶようになり、大人になっても、ハンバーグ、スパゲッティ、フライドチキン、カレーライスなど、噛むことの少ない食物をとる習慣が出来上がります。これらの食物は高カロリーでもありますから、肥満が進み、若くして、生活習慣病患者になってしまいます。


咀嚼運動が大脳を刺激し、認知症を予防し、時に、改善させることも報告されてきて、あらためて、食習慣の大切さが認識されています。


脳血管障害などで、ものを呑み込めないなど、口から食物がとれないとき、鼻から、あるいは腹壁から胃に管を通して、経管栄養として、必要な栄養素をしっかり含んだ、高カロリー液を流し込むようになります。しかし、長いこと咀嚼をしないために、腸管運動機能が失われ、頑固な便秘になることを経験します。また、脳障害の回復も遅れてしまう恐れがあります。さらに、咀嚼運動で分泌される唾液が減って、唾液の口腔清潔作用も低下し、細菌が増え、気道感染、肺炎を繰り返します。経管栄養を受けている患者さんの死因は肺炎が多いことで、医師に治療のあり方に反省を促しています。


このように幼児から、成人、老年まで咀嚼が重要な生命活動であることを考えて下さい。

サプリメント、健康食品として、市場にあるものは全て液体かカプセル、錠剤の形になっています。宇宙食からの連想ででもあるのか、成分だけがそろっていれば、生命を維持できると考えるのでしょうが、これは全くの誤解であります。野菜は調理をして、よく噛んで食べるべきで、青汁などを飲むのは不健康な健康思想としか言いようがありません。


健康人は必ず、食物を咀嚼して食べましょう。これが、健康維持の第一原則です。




2012/5/15発行

相川達也

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