ひろば183号 慢性心不全の日常管理 ー入退院を繰り返さないためにー

日本の死因順位をみますと、第一位は悪性新生物(癌など)で第二位は心疾患です。心疾患には当然心不全も入ります。殆どの心疾患の終末的病態が心不全だからです。また心不全は心疾患だけでなく、肺疾患・高血圧・主要臓器の老化によっても発症します。高齢化に伴い、慢性心不全は増加しつつあります。慢性心不全の症状については、ひろば(180号)で述べましたが、今回は慢性心不全にならないように、あるいは悪くならないようにするのに必要な日常生活管理について述べたいと思います。慢性心不全で入院された方の一年以内の再入院率は日本では40%、米国(コロンビア大学)で70%という統計があります。そして、再入院の原因は医学的なものより、自己管理の不徹底によるものの方が多いとのことです。


それでは再入院する方と入院せずに生活を維持されている方との違いは何なのでしょうか。それには、先ず慢性心不全と言う病気を理解することだと思います。慢性心不全は前述いたしましたように全ての心疾患の末期ですから完治する事はなく、確実に徐々に進行していきます。ですから、息切れ・むくみなどの症状が改善し、退院となっても病気が治ったわけではないのです。日常生活を上手にコントロールしなければ入退院を繰り返してそれこそ人生の終末です。入院なさって、点滴など加療を受け改善してもそれは薬物だけの力ではありません。


入院中の安静・塩分制限した食餌・規則正しい生活など統べてが影響し合って改善するのです。しつこいようですが治癒したわけではなく、退院後はこれらをご自分であるいはご家族と共に管理していかなければ、心臓は再び耐えられなくなり急性増悪の形をとるわけです。それでは自己管理はどのようにすれば良いのでしょうか。列挙してみます。



一、水分と塩分の制限

利尿剤といって尿を出す薬を飲むことが多いのですが塩分過多ですと、体内水分貯留は防げません。塩分は一日6〜7gくらいが適量と言われています。水分量は個々人異なります。むくんでいない時の体重を目安にして、朝晩毎日体重を測定して下さい。2坩幣綢僚鼎増えたら危険信号です。心不全が悪くなった可能性があります。


二、禁酒・禁煙

アルコール性心筋症と言う病気もあるくらい、アルコールで心臓は障害されます。禁煙は当然です。


三、運動の制限

当然息切れするような運動はいけません。息切れは心臓が悲鳴をあげているのです。重いものを持ったり、急坂・階段も出来るだけ避けたいのですが、無理なときにはゆっくり休み休みあがって下さい。


四、過労を避ける

仕事をなさっている方は特に注意です。仕事を辞める方・減らせる方は良いのですが、やむを得ず続けられる方も多いと思います。その方は特に日常管理が必要です。精神的・身体的に落ち着いた生活が理想なのですが。無理しないように。


五、服薬をきちんとする

服薬を中断したり、いい加減な飲み方により再入院される方も多いです。心臓の薬は飲み方を間違えると少量でも副作用がでたり、効果がない事もありますので処方通りに内服してください。


六、その他

風邪を引くと心不全は増悪しますので早めに受診を。時に鎮痛解熱剤はむくみや肺のうっ血の原因となりますので、やたら服用しない方が良いです。急激な温度差も良くないし、熱いお風呂に首までつかって、長湯するのも良くありません。

慢性心不全の状態になってしまった患者さんは、一生治癒することはなく、むしろ加齢と共に悪くなる傾向が強いのですから、これらのことを注意なさって、よりよい生活を送っていただきたいと思います。




2013/9/15発行

医師 相川礼子

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